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研究者インタビュー

ゲーム研究者インタビュー

星 幸広先生インタビュー【第2回】

テレビゲームへの正しい理解を~ゲーム研究者インタビュー

星 幸広先生インタビュー

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星 幸広(ほし ゆきひろ)

千葉大学大学院教育研究科講師

1944年福島県南会津町生まれ。1963年千葉県警察官となる。警察大学卒業後、千葉県鉄道警察隊長、警察庁警備局(総理大臣警護責任者)、千葉県少年課長、千葉県大原警察署長、千葉南警察署長、地域部参事官等を歴任し、2002年退官。現在、千葉大学大学院教育研究科講師。千葉市スクールガードアドバイザー、千葉市防犯アドバイザー、東京都墨田区「学校法律問題解決支援協議会」専門委員。「子育て・しつけ」や「学校危機管理」に関する講演を全国的に行っている。著書に「実践 学校危機管理ー現場対応マニュアル」「子育ての鉄則」。

第2回まず親にゲームの良さを知ってもらうことが大切だと思います。

2010年10月12日掲載

――ゲームに対して悪いイメージを持っている親御さんが多いみたいですが、いかがでしょう?

星:子供の凶悪犯罪が起きると、よく「あの子はゲームをしていた」「学校で裏サイトに書き込みしていた」などと話題になります。しかし、これだけ多くの子供たちがゲームをして、携帯電話を持っているのですから、犯人のほとんどは「ゲームをやっていた」「ケータイを持っていた」という条件を満たすのは当たり前なのです。

それよりも問題なのは、一人遊びに没頭するあまり、「人とコミュニケーションがとれない」「人と協力することができない」子供になってしまうことです。

ゲームを誤解している親が多いように思います。悪く思っている人もいます。私の講演を聞いてお母さんたちは、「ゲームを悪く言ってくれる」と期待している人もいますが、私がゲームを肯定するので、拍子抜けするみたいです。

何度もいいますが、ゲームは悪くないのです。ゲームの悪い面ばかり強調されているだけなのです。凶悪な青少年犯罪の事件が起き、その加害者が「ゲーム好きだった」となると、「すべてゲームのせいでこういう悪人になってしまった」と思ってしまうのです。実際はゲームのせいではなく、親の躾や学校での友達とのコミュニケーション不足だったりするのですが、わかりやすく「ゲーム=悪」といった構図になってしまうのです。

したがって、ゲームを作っている企業やクリエイターたちはもっとゲームの持つ有益性をアピールすることが必要です。もっともっとゲームの良い面を、多くの親たちに理解していただく努力をしないといけません。

――親御さんへゲームの良さを知ってもらうためにはどうしたらいいでしょう?

星:最近、「親と学校の付き合い方」「親と近所との付き合い方」など、子育てにおいて重要なことを学ぶ場が減っています。核家族化で家におじいちゃんやおばあちゃんがいなくて、親が親としてのあり方を学ぶ機会がないのです。いわゆる親として子供をどう教育していくのかを学ぶ「親学」を教える場がなくなってきているのです。そうした現状を問題と考えて、最近では、自治体が積極的に「子育てのための知識を学ぶ場」を設けようとしています。

私がお手伝いした地域もあり、千葉県いすみ市などは、4ヶ月間で「子供のほめ方、叱り方」「家族想いの子供の育て方」「前向きな子供の育て方」「キレない子にならないために」などの講義をしています。

また、福島県南会津町や高知県などでも、こうした子育ての知識を学ぶ取り組みをしています。しかし、このような先進的な取り組みをしている自治体はまだまだ少ないといえます。こうした「親学」を学ぶ場において、ゲームの功罪を学んでいくのが一番いいのではないかと考えています。

文部科学省や厚生労働省がこうした取り組みをしてくれればいいのですが、私の知る限り、そうしたことは現在のところしていませんので、できればゲームの関係企業がこうした「親学」の場について考え、子育てを学ぶ場の提供を行い、その中で親にゲームの啓発を図るのがいいのではないかと思います。

――家庭でも、リビングにゲーム機をおいて家族団らんでゲームを楽しむ。そんな姿が理想だと思うのですが?

もちろん、それが理想です。そういった家庭もあります。ゲームを通して家族間でのコミュニケーションが円滑になり、笑顔が増える。そしてなによりもゲームに対する功罪が子供たちにわかり、親もゲームに対する理解度が深まります。しかし、現実にはなかなか難しくて子供部屋に設置している場合が多いようです。そんな場合でも、親は決めた時間を絶対に守らせることが重要なのです。ズルズルと長時間ゲームをさせてはいけません。友達と楽しそうにしていても、時間になったら必ず止めさせることが大事なのです。親が子供に厳しく指導するのです。それが出来なければ子育てはできません。一度、約束を破ると、後はなし崩しで取り返しがつかなくなります。子供は約束を破っても怒られないと考え、家にいることがラクだと思うのです。外で少しでも嫌なことがあるともう出ていくことを止めてしまいます。するとそうしたことが引きこもりにも繋がることもあるのです。子育てで大事なのは「約束を守らせること」です。